麒麟獅子を走り終えて&今シーズンを振り返って・・・。

polepole_tea2010-05-24

5月22日、浜坂温泉のお宿である「丸文」に到着した私はさっそく浜坂の街を徒歩で探索することにした。
「丸文」の前には日本海の古き良き美しいビーチが広がり、窓からすぐ手が届きそうなところに海がある。これが本当のオーシャンビューですよね、いや、いい部屋でよかった。

このビーチの海岸沿いに東へ少し進むといくつかの観光スポットがある。まずは加藤文太郎記念図書館に足を運んだ。2階にギャラリーがあり、カウンターの男性にギャラリー見てもいいですか?とお声掛けすると、もちろんです、それとこちらが散策スポットの地図と加藤さんの略歴です、といって資料を2部くれました。なんて丁寧なの、だからこういう田舎って大好きです。ギャラリーには加藤文太郎さんの記事が書かれた昭和初期の新聞や雑誌、またビッケルや革靴など、ゆかりの品々が展示してある。近くに加藤さんのお墓があるというので墓参りにいくことにした。図書館からお墓まで、石畳の用水路に温泉が流れた小道を通りますが、ここに沢蟹がたくさんいてるいてる、沢蟹の連動した動きに見とれてつつもお墓への足を向ける。そこは普通の墓地の中にひとつの看板があるだけのお墓であった。30歳という若さで志半ばで命を失った加藤さんの生き様に心から敬意を表しつつ、ご冥福をお祈りする。
さて今度は駅前に足を向ける。田舎の駅のその雰囲気が好きだ。浜坂駅とかかれた表札の前にカニの看板があり、顔を出す穴が開いている。カニのほうはまだしもイカにも顔を出す穴が開いている。カニイカで取り合いになって喧嘩したりしないだろうか。そんな無用な心配事をよそに、街で唯一のコンビニと思われるお店にふらりと入り、そういえば父親にお土産をと思い、地酒のカップ酒を3種類買い込む。このあたりはなんといっても香住鶴ですよね、香住鶴。コンビニのお姉さんの愛想の良さにびびりながら、結局その日の夜のうちに三本とも飲んでしまい、レース前にまたこの店にお邪魔することになる。駅の施設に「鉄子の部屋」があり、ル〜ルル♪、ルルル♪、ル〜ルル♪の部屋ではなく、そうです鉄道オタクの部屋ということで、昔の餘部鉄橋の写真や車掌の制服などが展示してあり、昭和初期の鉄道の魅力を満喫できる。

そうそう、今日は新温泉町の役場で前夜祭なるものがありまして、そこで浜坂ちくわと第3のビールが無料で振舞われることとなっておりまして、さっそく前夜祭に顔を出す。前夜祭では地元の青少年会が麒麟の獅子舞を披露してくれますが、動きが非常に繊細でゆったりした麒麟の獅子舞でした。
さてそろそろ晩御飯ということで、温泉に浸かり、お宿の冷蔵庫から勝手に瓶ビールを取り出し、まずは浜坂の旅に乾杯。この浜坂の旅はカンさんとケンさんと私の3人旅の予定でしたが、急遽カンさんが来れなくなってしまい、ケンさんとの2人旅です。ケンさんと晩飯を食いながら、窓から見える海に浮かぶ灯りを見て、あれってイカ釣り漁船だよねといいながら、どんどん夜更けとともに漁船の灯りが増えていく。お宿の入り口に水槽があって、ケンさんがどうしてもサザエのつぼ焼きが食べたいというので、お宿に無理をいって、2つづつつぼ焼きを焼いてもらうことにしました。これはまた絶品のお味で磯のお味がお口の中にたっぷりを染み渡り、香住鶴のお供に最適でございます。

翌朝お会計したら1個120円であったことにマジびびりました。都会じゃありえねーぜ・・・(汗)。ほろ酔い気分でそろそろ寝ますかということで眠りにつき、翌朝目覚めたら当然のごとくの大雨。でも雨の浜坂も美しく、なぜか空気がすごく美味しい。

朝ごはんを山盛り食べて、雨の中、私とケンさんはハーフマラソンの会場に向かいました。会場内は屋台などが立ち並び、お祭り気分。おばちゃんが「兄ちゃん、これ食べていって、ほんまうまいよ」と指差されたのが丸ごと一匹のイカ焼きそれも特大であった。1本400円でそれは格安かもしれませんが、これから21キロを走らないといけない人間だどうしてそんなに大きな消化の悪いイカ焼きを丸ごと一本食べられようか。

さて今回ケンさんは初めてのマラソン大会出場で2時間以内のゴールを目指すということで私はそれならば2時間でゴールできるようにタイムメイクの役割を担うことにした。10時30分にスタートの合図がなった。雨の中ゆっくりと走り出す。ケンさんの走りは快調であったので、5キロ地点までキロ5分40秒で引っ張ることにした。このペースでないと2時間はきることができない。5キロ地点で28:07が経過したときにケンさんの膝が悲鳴をあげて残念ながら走れない状況となってしまった。膝の痛みを確認しつつ、私は名残惜しみながらこのレースを走りきるために前に向かって進むことにした。

5〜10キロ。ひたすら田園風景が続き、山間にある折り返し地点に向かう。余力もあるし、足もきっちり動いている。何よりも雨の浜坂の畦道が美しいではないか。この5キロのラップタイムは27:11でキロ当たり5分26秒。5キロ地点でしばらく立ち止まった影響もあり、結構かかってしまった。折り返しにあたり、帰り道は自分が一番気持ちいいペースで楽しく走りきろうとレースのコンセプトを切り替えた。

10〜15キロ。アップダウンを乗り越えて、田園風景をひたすら戻る。このアップダウンで失速するランナーを尻目に私は大人気ないほどにアップダウンを飛ばした。昇りも下りも楽しく走り、この5キロのラップタイムは24:06でキロ当たり4分49秒。ようやくリズムがあがってきた。

15〜20キロ。正直15キロ地点で感じたのは「もうあと6キロしかないの?」だった。寂しいぜ浜坂温泉、あとたった6キロでお別れなんて。ボクは畦道をひとり蛇行しはじめた。この雨の景色、山々から伝わる生命の息吹、山も大地もそして私もみんなも深く深く呼吸をしている。沿道で声援を贈ってれる手押し車のお婆さんを見て、確か2年前も見たような記憶がよみがえり、2年の歳月で相変らずお元気なお婆さんの姿に感動する。この5キロのラップタイムは23:50でキロあたり4分46秒。だんだん加速している。足も十分、気力も十分。このまま42キロだって走れそうな勢いのまま、最後の海辺のストレートに到着。

20〜21キロ。潮風を浴びながらゴールである浜坂小学校に向かう。両手を大きく広げ、すべてを受け止め、私は鳥になった。そう空を自由に飛ぶ鳥に・・・。空を飛ぶことができなくても両手を広げて翼に見立てて、私はこの綺麗な大自然の中を自由に飛ぶことができる。遠くで聞こえる小学生たちの声援、潮風の音、私は空を見上げて冒険の眼鏡を取った。まぶたに飛び込むのは大粒の雨。その雨を顔面で受け止め、さらに加速した。そしてスタートから1時間48分24秒が経過したとき、私の浜坂の冒険は終わりを告げた。

あらためてこの麒麟獅子というハーフマラソンの大会で浜坂温泉という素晴らしい場所に出会えたことに感謝したい。
海があり、山があり、田園があり、学び舎があり、人々の笑顔があり、温泉がある。海の幸があり、新鮮な空気がある。それ以外になにもない。でもそれ以外に必要なものとはなんだろうか。実は何も無いのではないだろうか。


振り返れば、今シーズンは2009年11月の丹波ロードレースのハーフマラソン自己ベスト更新で始まった。ハーフで自己ベストを6分以上も更新し、非常に幸先のよいスタートであり、それにうぬぼれてしまったのか、同じく11月の福知山フルマラソンは10キロ以上も歩くという惨敗であった。そこからもう一度立て直して気持ちをしっかりと持ってトレーニングに励み、12月には初めてのトレイルレースであった東山三十六峰では目標であった4時間切りを達成したものの、足首を捻挫するというアクシデントにも見舞われた。その後、2010年2月の駅伝では自己ベストが更新できず。失意の中で走った篠山ABCフルマラソンは途中で失速したものの、雨の振る中で自己ベストを更新することができた。そして自分自身のリズムと調子を取り戻し、心身ともに万全のコンディションで挑んだ5月の鯖街道ウルトラマラソンでは無事に完走を果たすことができ、こうしてシーズン最後の麒麟獅子でもハーフマラソンを楽しく走りきることができた。
結局4年目のシーズンである今シーズンが挫折も含めて一番充実していたシーズンであったと思う。新しいことへの挑戦、そして自分の弱さも含めて真摯に向き合うことができたシーズンであった。しばらくは心身ともに集中力を開放し、また来シーズンも充実したシーズンを過ごせるように、オフシーズンの間にいっぱい英気を養いたい。ヒトチの大冒険は来シーズンも続きます。

2009−2010シーズンを終えて、私を応援し、支援頂いた皆さん本当にありがとうございました。
あと一度も洗濯せずにシーズンを過ごしてすいませんでした、母親に感謝です。



2010年5月23日(日)
第23回麒麟獅子ハーフマラソン男子の部

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1-5 28:03(5:37)
5-10 27:11(5:26)
10-15 24:06(4:46)
15-20 23:50(4:44)
20-21 05:12(5:08)

total: 1:48:24(5:08)