第30回篠山ABCマラソン参戦日記。

5時30分の目覚まし時計が鳴る2分前に僕は自然に目を覚ました。
「あっ、珍しい…、俺って緊張しているんだ…。」
僕は自分の緊張感と早朝から対話をしていた。

JRを乗り継ぎ、福知山線篠山口へ。
休日の日帰り一人旅のような気分でレース会場に向かう。

予想通りの冷え込み。
雨に加えて気温がどんどんと下がる。
スタート地点の時点ですでに手先足先の感覚がないほどに身体が冷える。
足踏みを繰り返し、空を舞うヘリコプターに願いを込めて。
僕は42キロの旅にでた。


10キロ地点。
予定通りの47分台で通過。
極寒の中でも水分補給を怠ってはいけない。
このレース初めての水分補給で紙コップをつかんだ瞬間。
よりによってナミナミと注がれたコップをつかんでしまう。
焼酎お湯割りならナミナミと注がれた方が好きやけど。
よりによってこんな寒い日に…。
想定通り、つかんだコップから大量に水がこぼれ。
手袋がびちゃびちゃになる。
濡れた手袋でさらに手先が冷えて、感覚を失うぐらいに。
あ、この感覚なんかに似ていると思った瞬間。
そういえば真冬のサーフィンで体験した感覚と一緒。
こういう極寒レースでは100円手袋には限界がある。
みんなと一緒のマラソン用のグローブにしとけばよかったかな。
そんなことを思いながら、僕はさらに前に進んだ。


20キロ地点。
ゲストランナーの有森裕子さんがコースに立ち止まっている。
走ってくるランナーたちと次々にハイタッチを交わす。
私ももちろん有森さんのもとへ。
近づいてみると、極寒の雨の中、手袋もせずに素手で。
大声でみんなに激励を飛ばしている。
「もう半分じゃないかっ!」
「フォー!、フォー!○×※○×※っ!!」
精一杯のチカラで叫び続ける彼女。
雨の中、必死の雄叫びに一体どれだけのランナーが勇気づけられたことだろうか。
ひとを励ます、応援するというのは、これほどまでにパワフルなことなのか。
熱い、熱い、極寒だけど彼女はとにかく熱い…。
これがオリンピックメダリストの尋常でないテンションなのか。
いくらテレビカメラが回っているとはいえ、なんて光り輝いている人なんだ…。
背中のポッケに忍ばせたピットインという食材を。
僕は予定通り20キロ地点で体内に入れ、さらに前に進んだ。



30キロ地点。
空腹で意識が朦朧とする前に30キロ地点で体内に入れるものがある。
そう、レースで必ず愛飲しているカフェイン入りのSHOZ。
このネバネバした液体を飲めば、頭は覚醒し、身体にチカラがみなぎる。
背中に忍ばせたSHOZを取り出そうとした瞬間。
あれ…、ない…。
身体から血の気が引いてきた…。
どうやら20キロ地点でピットインを取り出す際に路面に落としてしまったらしい。
SHOZを楽しみにここまで走ってきた僕は心が折れそうになった。
このままSHOZなしで僕は完走することができるのだろうか。
いや、負けてはいけない。
ハプニングに負けてはいけない。
もともとSHOZを落としたのはお前自身じゃないかっ!
ハプニングのせいにしてはいけない。
沿道の野球少年からチョコレートを貰った。
これをSHOZと思い込もう。
チョコをひとつ口の中に入れ、ぼくはさらに前に進んだ。



40キロ地点。
もう足は完全に動かない。
気持ちはキレていなかったがペースがあがることがなかった。
でもあと2キロでこのレースが終わると思えば、少し寂しい気持ちにもなった。
30キロ地点を2時間半で通過するところまでは自分のレースができた。
でもそのあとにやっぱり崩れてしまった。
一生懸命練習してきたことがあと2キロで終わってしまう。
身体の疲労とは裏腹に、まだまだ走りたい気持ちがいっぱいだった。
応援に駆けつけてくれたMちゃんたちの声援が聞こえた。
こうして極寒の雨の中のレースを支えてくれる仲間がいる。
とっても幸せなことだと思った。
それがなければ、どうして雨の中を42キロも走れるだろうか。
ゴールまでとにかく笑顔で走りきろう。
あと少しで終わってしまうレースを最後まで楽しもう。
僕は心に近ってゴールに向かった。



会場から駅に向かうシャトルバスの中。
何故だから急に涙が溢れて止まらなかった。
冷えた手先を缶コーヒーで温めて。
ようやく人間らしい体温にまで回復した途端。
次は抑えきれない感情が溢れでて胸がいっぱいになった。

精一杯走ったという納得感はある。
でも最後まで走りきれなかったという後悔もある。
目標タイムに届かなかったという失望感もある。
準備してきたことがついに終わってしまったという虚脱感もある。

いろんな感情が渦巻いていた。
俺はいったいなんでこんなに熱くなってんだろう?!
泣くぐらいならもっとちゃんと練習しとけよなぁ…。
そんなことも考えた。


溢れでた涙の本当に理由は自分にもよくわからない。
でも次のレースではもっと素敵な涙が流せるように。
さっそく今日からまたトレーニング頑張ろう。
それが自分らしい生き方だと思う。


さて。
次の目標は鯖街道制覇だ。



2010年3月7日(日)
第30回篠山ABCマラソン
未登録男子の部


LAP 通過タイム(キロ当り)

                                                      • -

1-5  00:24:05(4:49)
6-10 00:47:48(4:45)
11-15 01:12:13(4:51)
16-20 01:36:59(4:59)
21-25 02:03:06(5:13)
26-30 02:30:04(5:24)
31-35 02:58:54(5:46)
36-40 03:29:11(6:03)
41-fin 03:42:57(6:16)

total 3:42:57(5:17)