【号泣3部作】奇跡のピアニスト〜辻井伸行リサイタル〜

年齢のせいでしょうか。ここ最近非常に涙腺が緩くなっています。少しお酒を飲むともうダメです。知らないうちにまぶたから涙が零れ落ちてしまいます…。涙が溢れ出てくる瞬間にぐっと目頭が熱くなる瞬間がありますが、あの瞬間に不思議と「ああ、オレって生きている」って感じたりします。

さて春の号泣3部作ということで勝手に連載を企画しました。まずは奇跡のピアニスト辻井伸行さんの番組についてこの感動をこのブログを通してお伝えしたいと思います。この番組は4月10日(日)の21時よりBS朝日で放送された番組です。ちょっとした疲労感と眠気を感じていた私はこのピアノの音色を聞いて、瞬間的に身体がこわばったことを覚えています。

辻井さんの奏でるピアノには、そこには絵が存在しています。情景が浮かべることができるのです。私はテレビ番組にも関わらず、いつの間にか目を閉じていました。目を閉じて耳を澄ませば、そこにはキラキラしたおたまじゃくしたちが時に集団で、時にたったひとつで、緩急をつけた協奏を織り交ぜながら、心の中のモヤモヤを全部綺麗にふき取ってくれるような爽快な気分になりました。そしてそこにはもちろん絵が存在します。非常に綺麗な音色の絵です。どうしてそんなに綺麗に聴こえてくるのか。きっとそれは透明だからだと思います。限りなく透明に近い絵なのだと思います。私はふと目を開けて辻井さんが奏でる姿に注目しました。彼の演奏スタイルは少し首を左右上下に傾けながらピアノを奏でます。それを見たとき、ふとひとつのことに気がつきました。ピアノは鍵盤を叩く強弱で音色の作り上げていくと言われますが、その指と鍵盤の物理的なタッチだけでは表現しきれない微妙なニュアンスの音の強弱を彼はピアノ線と耳を直線で結ぶ距離や角度で表現しているのではないか。すなわち彼の中でこそもっとも完成された彼の表現が奏でられているように感じました。

ふと気がつくと目頭が熱くなり、これはぜひ皆さんにも見ていただきたいと思い立ったわけです。
これは昨年6月に開催された「ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール」での演奏です。世界最高峰のコンクールでの優勝はそれは確かに素晴らしいことですが、この演奏を前にすると、コンクールとか優勝とかそういう快挙や名誉ですら色褪せてしまいます。それぐらいに圧巻の映像です。たった7分間の映像ですが、私は何度も何度も繰り返して聴きました。演奏を終えて奇跡の左手をピアノに添えて一礼する辻井さん、鳴り止まない拍手、また一礼する辻井さん、とまらないスタンディングオベーション。。。

素敵な音をありがとう。。。
気がついたらこの演奏を言葉で表現することはもう必要のないことなのかもしれません。
奇跡の両手で心を優しく包み込みこんでくれたことにいっぱい感謝したいです。