【号泣3部作】アタカマ砂漠マラソン

さて、春の号泣3部作の2作目は4月9日にNHKBSで放映された『密着!アタカマ砂漠ラソン』という番組についてです。
このアタカマ砂漠ラソンとは、チリの標高三千メートルの砂漠250kを7日間かけて走破する世界でも最も過酷なレースといわれています。しかも大会運営者から選手に配布されるのは水のみ。そうです、7日間の食料も選手たちは背負って走らなければならないわけです。まさに道なき道を駆け上り、縦横無尽の砂漠をひたすら走り続けるという人間の想像を絶するレースなわけです。僕自身は鯖街道ウルトラマラソンという3つの峠を越えて福井県から京都出町柳までの76キロを走破するレースを経験しましたが、あのレースはアップダウンは激しいとはいえ、4割が山道、6割が舗装道でした。このアタカマは砂漠、7日間連続、しかも灼熱地獄ということで、きっと鯖街道の何十倍も過酷なレースといえるでしょう。

『2010年5月16日鯖街道ウルトラマラソン日記はこちらを参照』
さて、この番組ではあるアラブ人の選手に密着し、レース模様を伝えていくわけですが、このアラブ人選手はトップクラスの選手でもなんでもなく、むしろ初日から脱水症状を訴えるなど、どちらかというと完走すら危ういのではないかというぐらいの選手でした。この選手は辛くなって立ち止まると、必ずリュックの前にぶらさげた小さなお人形を触りだします。このお人形は10歳になる彼の娘から託された御守りでした。彼はいまにも倒れそうな脱水状態の中、砂漠の真ん中からゆっくりと歩き始めます。その一歩一歩の足跡は砂漠に模様を残し、風が吹いていづれ消えていきます。

そうです、彼がそうやって一歩一歩前に進むのは確固たる理由があるのです。それは10歳の娘に完走することを約束してきたからです。彼の娘さんは生まれつき脳の障害があり、自分で自分のことを行うことが困難な状況です。しかしながら、彼は父親として、困難な道のりでもこうやって一歩一歩前に進むことの大切さを娘に伝えたい。そんな一心で彼は灼熱の砂漠の中でも一歩一歩前に進めるのです。

立ち止まり、しゃがみこみ、小さな人形に触れ、そしてまた立ち上がり、彼は歩き始めます。途方もなく遠い道のりでもその小さな一歩一歩を積み重ねていくことでしか、ゴールにたどり着く方法はないのです。

彼はカメラに向かって娘さんへメッセージを送ってよいかと訊ねました。カメラマンがOKを出すと、彼は「I Love You!」と叫び始めました。私の目頭は一気に熱くなり、大粒の涙が零れ落ちました。そして彼は果敢にも7日間のレースを完走してみせました。もやは順位やタイムなどはちいさなことに過ぎません。彼は誰よりもヒーローであり、誰よりも綺麗に輝いていました。


砂漠に残る小さな一歩一歩の模様。。。
諦めない、絶対に諦めない強い気持ち。。。
彼が握り締めた埃まみれの小さな人形。。。
いまでもはっきりと僕の脳裏に焼きついております…。



公式サイトはこちら。
http://www.4deserts.com/atacamacrossing/

それにしても最近のNHKBSプレミアムの番組はすごく内容が充実しています。
次に楽しみにしているのは『パタゴニア最果ての冒険レース』です。
4月16日22時からの放送予定です。
http://www.nhk.or.jp/bs/hvsp/