雨で一句。(2009年9月24日執筆)

シュッシュ〜。
ポッポー。

汽車が走っていた。
この線路はどこまで続いているのだろう。
日本は海に囲まれた島国だ。
だからきっとどこかでは途切れているのだろう。

終着駅とはどんなところだろう。
きっと海が見えるのだろう。


ずっと空を見ていた。

大きなどんより雲が雨を呼んできっと今にも雨が降るというのが大方の予想だった。

秋の夕暮れは日がくれるのが早い。
雨が降らないまま空には三日月が浮かんでいた。

三日月の光はどんより雲でぼやけていた。
さながら霞める朧月夜であった。

いつかどこかで見た景色だ。
走馬灯のように遠き記憶が頭を駆け巡った。
一度でもなく、二度でもなく、三度目の景色だった。



帰り道で雨に打たれた。
ポツリポツリと疲れた肌を濡らした。
合羽も傘もあるがもうボクには必要なかった。


だってお家はすぐそこなんだから。
温かいお風呂だってあるし、フワフワのタオルだってある。

雨の夜空を見上げた。
やっぱり三日月が綺麗だった。




多謝雲上耐忍
(雲の上で耐え忍んでくれた雨よ、本当にありがとう)

因製歌曲一首
(よって私は一首の歌を作り)

代雨述意
(雨の心情を代わりに述べてみようと思う)




三日月と 三度目の夏に 酔う魂  雨は降らねど 頬伝う雫



(大意: 秋の夕暮れは釣瓶落としのように 日が落ちるのがはやい さっきまで夏のような気候であったのに 気がついたら もう空には三日月が浮かんでいる 数えれば確か三度目の夏だった いや正確に例えるなら夏ではないが 3度とも夏と思えてならない 美しい日本酒は一滴も飲んでおらぬが 確か3度とも酔っていた記憶だけがある どこへ行ってしまったのだろう僕らの魂は 結局雨は降らなかった でも頬は大粒の雫が伝い まるで秋の大雨に打たれたようだった とてもしょっぱい味がした  )