○で一句。

声で一句。(2009年10月26日執筆)

ふと目が覚めた。 「ここはどこだ?」と心の中で呟いた。 夢の続きか、さては現実の世界か。 「ここはどこだ?」今度は声に出して囁いてみた。 ふと気がついた。 無意味だ。 なんて無意味な疑問をボクは声に出してしまったんだ。 そんなことは呟く前に囁く前…

空で一句。(2009年10月20日執筆)

空ってこんなに青かったっけな。 男は走りながら空を見上げてそうつぶやいた。 いつものコース。 いつもの時間。 何度も何度も同じ空を見て走ってきたけど、今日に限って空は一段と青く見えた。 空の色は容易に比較は出来ない。 比較する空の色はもう過去の…

橋で一句。(2009年10月15日執筆)

『 確かめる前に 信じてもいいですか…。 』 こぼれないように。 溢れないように。 心に涙をいっぱいためて。 息を吸い込み、嗚咽を精一杯抑えて、彼女はこう囁いた。 夜の海の闇の中に浮かぶ月の満ち欠けは 海辺の潮の満ち引きと呼応しているように思えてな…

手で一句。(2009年10月8日執筆)

ふとパン屋に入った。 1個でいい、1個だけパンをかばんに入れておこうと、ふとパン屋に入った。 くるみのパンを選んだ。 トングで挟んでトレイに乗せた。 すると店員の女の子のはきはきとした声が聞こえた。 「焼きあがりました。オニオンチーズのパンが焼…

道で一句。(2009年10月7日執筆)

君が歌を詠むことで、おもしろくないと思う人間だっているんだよ。 ボクはその言葉の意味が全くわからなかった。 それでもずっと考え続けた。 その言葉の意味について、寝ても醒めても、一日だって忘れた日などなかった。 夜になれば頭に浮かふ。 この言葉を…

栗で一句。(2009年9月28日執筆)

ロ〜ル♪(ロ〜ル♪) ロ〜ル♪(ロ〜ル♪) マロンのお味のロ〜ル♪ 木曽路の入り口にあたる古い宿場町。 美濃と信濃を分ける分水嶺にコール&レスポンスがやまびこのように鳴り響いた。 ボクは旧中山道を振り返り、一軒の菓子屋を訪ねた。 「ぎこちないお菓子で…

米で一句。(2009年9月25日執筆)

ある日ある昼下がり、黄金の稲穂が頭を垂れる畦道を北上していた。 目的地までまだもう少しかかりそうだ。 以前見かけたことのある一軒のお店が目に入った。 店の名前は「白ごはん」という。 古き良き日本の風景に馴染んだ1軒のお店は旅人を誘引するに十分…

雨で一句。(2009年9月24日執筆)

シュッシュ〜。 ポッポー。 汽車が走っていた。 この線路はどこまで続いているのだろう。 日本は海に囲まれた島国だ。 だからきっとどこかでは途切れているのだろう。 終着駅とはどんなところだろう。 きっと海が見えるのだろう。 ずっと空を見ていた。 大き…

卵で一句。(2009年9月2日執筆)

バスで幼稚園に通うことになった。 今思えば、すぐそこなんだけど、幼きボクにとってそれは旅のように感じた。 先生、お友達、お遊戯、すべてが新鮮で生まれて初めて接する社会であった。 「今日のおべんとなんですかー!」 みんなで大合唱してお弁当の蓋を…

駅で一句。(2009年9月1日執筆)

懐かしい電車。 懐かしい景色。 車窓から見渡す空は真っ赤な夕焼けが広がっている。 モクモクとした夏雲はザワザワとした鱗雲へと表情を変え、過ぎ行く夏を名残惜しんでいるようだ。 幼い頃、この電車でよく祖母に会いった。 祖母はいつでもボクを温かく迎え…

鮪で一句。(2009年8月31日)

「君は毎日の生活で何回食べるのだい?」 「えっと、朝昼晩の3回ですよ。」 「少ないなー、ボクなんて6回は食べるんだよ。」 「6食も何を食べるんですか?」 「そうだね、ツナ缶、プロテイン、鳥ササミ、納豆、あとは…、うーん…。」 「タンパク質の塊ばっ…

窓で一句。(2009年8月28日執筆)

レストランに入る少女を見た。 今日は月に一度の家族での外食だろうか。 ハンバーグが食べたいよぉ。エビフライがいいよぉ。 幼き頃、決して裕福でない家庭で育った私にとって、レストランでハンバーグなど夢のまた夢であった。 冬のある雨の日、傘も差さず…

秋で一句。(2009年8月28日執筆)

「ひとり身に風が冷たいのはなあぜ?」ある日ある店で女がこういった。 それを聞いていた男は新聞をめぐり聞こえないふりをした。 となりで少し濃いめの珈琲をたてていたボクはその季節にかかわらず、きっと秋風なんだと自分にうなずいた。 春風は冷たくない…

涙で一句。(2009年8月27日執筆)

昔、目の前でグラグラと煮え立つモツ鍋を眺めていたら、悲しみが湧き上がる自分の心情と妙に重なってしまい、突然涙が溢れ出してとまらなかった。 そして今朝、行き交う電車の窓から流れる山々を眺めながら、ふと昔のことを思へば、涙とは、その悲しさ、苦し…

『○で一句』コンテンツの移管について。

2009年8月24日から2009年10月26日の約2ヶ月間において、試行的に執筆されてSNSサイトに掲載されたコンテンツをこちらに移管します。 「○で一句」とは筆者がこよなく愛する毛馬村出身の与謝蕪村の名作である「春風馬堤曲」という作品における散文と漢文と句の…

蝉で一句。(2009年8月24日執筆)

長渕剛さんが「蝉が泣く チクショウと」などと歌うので、彼らの鳴き声に耳を傾けて見たが、残念ながらそうは聞こえなかった。 何をそんなに鳴いているのか、彼らの気持ちを考えてみたけど、傷心者の今の私にはとてもなにか言葉を選んで例えることなどできは…